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「舞いあがれ 東大阪」メッセージ

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笹井 雅生さん

箱屋常吉 代表取締役

板材を切り出す5代目・笹井雅生(ささい まさお)さん。

100年以上続く伝統の職人技で、
土に還る生きた箱をつくり続ける

清々しい木の香りや、手に馴染む優しい質感。箱屋常吉(はこやつねきち)は国産の天然杉を使い、伝統の職人技を駆使しながら、一つひとつ手づくりで木製の弁当箱をつくり続けている。
「“そろばん”と呼ばれる70年前の機械を使い、寸法に合わせて板材を切ります。昔の機械はアナログだから機械任せにできない分、木と会話しながら作業できるのがいいんですよ」。代表取締役の笹井雅生さんは愛おしそうに板材を手にしながら、そう話す。

そろばんに向かい、木と会話しながら作業を進める。

創業は明治元年。初代・笹井常吉が大阪の江戸堀で営んだ木箱屋が始まりだ。「当時は有名料亭の料理箱や菓子司の菓子箱などをつくっていたそうです。しかし、時代の変遷とともに量産型の贈答用木箱の製造へと変わり、平成になると大量生産で安価な木箱が求められる時代に。当社も安価な中国製品に押されて廃業の危機を迎えていました。そんなときに私は実家へ戻り、家業の立て直しを図ることになったんです」と、笹井さんは当時を振り返る。

実は笹井さんは若い頃にパイロットを目指し、アメリカへ渡っていた。しかし、その夢は叶わず、別の仕事に就いていたときに家業のピンチとモノづくりの現状を知り、帰阪した後、5年余りの年月をかけて、初代の名前を冠したプライベートブランド「箱屋常吉」を立ち上げたという。

初代がつくった菓子箱は高麗橋にあった鶴屋八幡でも使われていた。
出典:「浪速の魁」(明治15年刊)より。“菓子商 鶴屋八幡亭”とあり、蒸籠の周辺に小さく菓子折りが見える。

箱の組み立ても一つひとつ手作業で行う。

「箱屋を継ぐつもりは全くありませんでした。けれど、あるとき子どもの頃使っていた木の弁当箱のことを思い出してね。友だちが持つウルトラマンが描かれたアルミ製のものが羨ましかった反面、私の弁当箱は木がご飯の水分を吸って湿気を逃してくれるから、ご飯がベチャつかず、本当においしかった。それをもう一度復活させたいと思ったんです」。

東大阪の工場から生まれる看板商品は、吉野杉など国産の天然杉を使った無垢無塗装の「おひつのようなお弁当箱」。
木が持つ保湿・抗菌効果でふっくらとしたご飯がいつでも食べられると、全国にファンを持つ逸品だ。
工場では板材の加工から組み立てまで、すべて手作業で行っている。「木製品が東大阪でつくられていると聞くと、皆さん驚かれます。でも、大阪には昔から曲物と指物の文化があり、この弁当箱はその両方の技術が生かされているんですよ」と笹井さん。

釘などを使わず、曲物と指物の技術を駆使して組み立てていく。

近年は木で作ったバッグやスピーカー、豆行灯など、新製品を続々と開発したり、子ども向けのワークショップを開催して木の文化と魅力を伝える活動にも取り組んでいる。

笹井さんは最後にこう話す。「この国の木材で製品をつくり、森を育て、未来の子どもたちに繋ぐことが自分の使命だと考えています。土に還る生きた箱をこれからも作り続けていきます」。

箱屋常吉の弁当箱は形も多彩。使い込むほどに趣が増すという。
木の質感と機能性を生かした製品を開発。手前右はスピーカー。

DATA

箱屋常吉

駅名
JRおおさか東線「長瀬駅」
住所
大阪府東大阪市渋川町2-15-9
電話番号
06-6224-7800
受付時間
9:00〜17:00(土曜・日曜・祝日を除く)
定休日
土曜・日曜・祝日
アクセス
JRおおさか東線「長瀬駅」から徒歩約15分
公式HP
https://tsunekichi.net/
  • ※掲載情報は2022年9月現在のものです。変更している場合があります
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