「舞いあがれ 東大阪」メッセージ
MAIAGARE
HIGASHIOSAKA
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若林 克彦さん
ハードロック工業株式会社
代表取締役会長
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若林 克彦さん
ハードロック工業株式会社
代表取締役会長
ネジは必ず緩(ゆる)むという常識をくつがえす、世界で唯一の緩まないナットを開発し、世界からも注目されるハードロック工業株式会社。鳥居の柱と貫(ぬき)を固定するくさびからヒントを得て開発された「ハードロックナット」は、常に厳しい環境下にある鉄道や鉄塔、高速道路、橋梁といったインフラ設備から発電設備、産業機械、人工衛星にいたるまで、国内外のさまざまな業界・分野で使われている。「ハードロックナット」と聞いて、「あれか!」とピンと来る人は少ないのでは?そこで、開発したご本人、代表取締役会長の若林 克彦さんに、誕生秘話やどういった役割を持つものなのかを聞いた。
若林さんは28歳で起業。昭和35(1960)年に開催された大阪国際見本市でもらったナットのサンプルを見て「自分ならもっと簡単で、安くていいものがつくれるはず」と、最初の戻り止めナット「板バネかしめナット」を考案した。
高度経済成長の追い風もあり、当時の売上は年間12、3億円にもなったそう。しかし、評判だった「板バネかしめナット」も工事現場で使われる削岩機や杭打ち機の激しい振動や衝撃に耐えられず、ナットが外れる事故がたびたび発生。損害賠償を払わされることになる。「このナットは、あかん。絶対にボルトが緩まないナットをつくる」と決意したと同時に、苦悩の日々が続いた。
「ある日、近くの神社に参拝に行った際、鳥居の貫を固定するくさびを見て、『この構造をボルトとナットのガタを埋めるものに使えるはず』とひらめきました。日本古来の建造物は釘ひとつ使わず、柱に貫(ぬき)を通して組み合わせ、くさびで固定していますが、どのようにナットに応用するか、約10カ月の間、毎日試行錯誤を繰り返しました」。
1個のナットでは実現できず、2個のナットを使って、ついにくさびの原理を実現させることに成功。2個のナットという大きな短所が発生したが、これが最大の長所となった。その後、当時の会社で製造していた「板バネかしめナット」の権利や設備など、すべて共同事業者に譲渡し、昭和49(1974)年にハードロック工業株式会社を設立。
「1年ほどで黒字になると踏んでいたのですが、3年くらいはダメでしたね。従業員も抱えていたので毎日が必死。そこで開発したのが、ひっくり返しやすいように底をV字型にした『たまご焼器』。これも最初はまったく売れなかったんですが、地道に実演販売を続けていると、その便利さが評判となったんです、ナットをつくらないといけなのに、社員総出で毎日2,000~3,000個のたまご焼器をつくっていました(笑)」。これのおかげで設立当初の資金獲得に大きく貢献したが、3年ほどでブームは去ったそう。
次につくったのは、ちり紙を1枚ずつ簡単に取り出せる「ペーパーホルダー」。この頃はロール紙の台頭でちり紙メーカーは危機感を感じていたので、「抱き合わせて販売すれば売れる!」と踏み、その目論見通りに何十万個と売れたが、これも3年ほどで下火になったという。 「ベストセラーになってもロングセラーにはならない。モノづくりの難しさを知りましたね。それから『ハードロックナット』を中心に事業を進めることを決めました」。
「ハードロックナット」は、くさび型の偏心加工を施した凸ナットの上から、真円加工の凹ナットをかぶせるように締め付けることで、強力なロック効果を発生させるというもの。「どんな振動や衝撃に対しても、初期の締め付け力が低下しないのでボルトが絶対に緩まない。さらに、ボルトの破壊や折損を遅らせることにも貢献している」と若林さん。100年でも絶対に緩まない構造を持つというナットは、安全を最重要視するところには必ずといっていいほど採用されている。
「最も身近なものといえば鉄道ですね。新幹線の車両連結装置やワイパー軌道軸部など、車両だけでなく、レールを連結する継目板にも使われていて、国内のレールの大半を占めているんですよ」。
2014年には東海道新幹線開業50周年を記念して、長年の安全運転に貢献した企業としてJR東海から表彰された。鉄道だけでなく、明石海峡大橋や東京スカイツリー、自動車など、その用途には限りがない。ちなみに、東京スカイツリーには約40万個ものナットが使われている。
「ハードロックナット」は目立たない存在だが、確実に私たちの暮らしに大きな安心と安全をもたらしてくれている。それでも、まだまだ改良の余地があるという。「次は絶対に緩まないボルトをつくりたい」と、安全を追求する若林会長の姿勢は、ナットと同様に緩むことなく現在も進行中だ。
DATA
安全性を守る縁の下の力持ち
絶対に緩まないナットで世界も注目!