「舞いあがれ 東大阪」メッセージ
MAIAGARE
HIGASHIOSAKA
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鳥羽瀬 公二さん
株式会社鳥羽瀬社寺建築
代表取締役会長
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鳥羽瀬 公二さん
株式会社鳥羽瀬社寺建築
代表取締役会長
神社仏閣などの歴史的建造物を手がけるのが、堂営大工(=宮大工)と呼ばれる職能者。大工のなかでも最高の技術と知識を持っており、歴史的建造物などの修理や建築に従事している。そんな宮大工を多く抱える株式会社鳥羽瀬社寺建築は、多くの国宝や重要文化財の保存修理のほか、一般的な社寺建築の設計や施工も行っている。
宮大工棟梁として、その世界で一目置かれる存在が、同社代表取締役会長の鳥羽瀬 公二さんだ。子どものころから大工に憧れ、家大工の世界に飛び込んだのが16歳の時。「仕事にも慣れてきた20歳の時、法隆寺の宮大工として知られる西岡 常一氏の本を読んだことがきっかけで、宮大工という仕事を初めて知りました。それからは宮大工になりたいという気持ちが募り、憧れの奈良時代の建物が唯一残っている奈良へ仕事を探しに行ったんです」。
初めて入った現場は、奈良・東大寺の大仏殿。鳥羽瀬さんが奈良へ来た昭和52(1977)年は、ちょうど東大寺で昭和の大修理<昭和48(1973)年~昭和55(1980)年>が行われていた。
「家一軒を建てられる技術はすでに持っていたので少しは自信があったのですが、使用する工具も違うし、建物の各部位の名称も特殊で分からず、本当に苦労しました。でも、初仕事で世界最大の木造建築である東大寺大仏殿に関われたことはとても素晴らしい経験でした。今でもその感動は胸に焼き付いています」と微笑む鳥羽瀬さん。
その後も宮大工として腕を磨き、奈良・法隆寺の律学院、大阪・四天王寺の五智光院、大阪・八坂神社、広島・厳島神社、茨城・鹿島神宮など、次々と国宝や重要文化財に携わることになる。
家大工だった時を除いては、師匠は特にいないという鳥羽瀬さん。「現場ごとに教えてくれた師匠たちがいます。しかし、一番の師匠は建物そのもの。古代(奈良時代・平安時代)、中世(鎌倉時代・室町時代)の建物は本当に優秀ですよ。大陸からきた技術ですが、昔の日本人はそのまま鵜呑みにせず、日本の風土や木の質に合わせて、うまく考えてつくっているんです。今の大工には到底真似できない技術力ですね」。
保存修理などでは、可能な限り元の状態に戻すことを前提に、宮大工の技術が生かされるという。数百年前の建築物を解体し、職人の技術をひも解き、未来へと残す、その難しさは計り知れない。「私が手がけた建造物も数百年後には解体され、未来の宮大工の目に触れることになります。いい仕事をしておかなければならないと思うわけですよ」。
ただ古いものを残すだけではない。その時代の職人の手により、社寺建築の技術が伝えられている。「歴史的建造物を残すことは歴史を学ぶということなんです」という鳥羽瀬さんの言葉が心に響いた。
技術や知識の習得もさることながら、一番大変なのは材木を調達することだという。いま、国内林業の衰退により、国産の良木を手に入れることは難しくなっている。そのため、東大阪の本社とは別に、奈良にも製材所を構えている。「良木の情報を得ると現地に行ってこの目で確かめ、良いものであれば、いつ使うか分からなくても購入しています(笑)。木を乾燥させるには時間もかかるし、材木をそろえておけば、いつ、どんな仕事が入ってもすぐに対応ができるからね」。
「宮大工は、日本が世界に誇る伝統と文化を継承し、美しい日本の建造物を未来へとつなぐ役割を担っている」と鳥羽瀬さん。2020年12月に「伝統建築工匠の技:木造建築を受け継ぐための伝統技術」が、ユネスコ無形文化遺産に登録された。数百年以上ずっと修理を繰り返すことで保存してきたその技術が、世界的にも認められたのだ。鳥羽瀬さんは、日本伝統建築技術保存会会長として、伝統建築の技をユネスコ無形文化遺産登録に尽力した一人でもある。宮大工の育成だけでなく、多くの人にその価値を知ってもらうことが何よりも必要だと、イベントや広報活動にも力を入れている。
鳥羽瀬さんの会社には、現在36名が在籍している。若い職人も多く、キビキビと先を読んで動く姿が印象的だった。話を伺った日には、事務所に学生の姿も。どのような仕事をしているのか、また、大学などで専門的な知識を得てから職に就くのがいいのかなど、相談に来ていたようだ。「若い人が伝統ある職や技術に興味を持つ。こんなに嬉しいことはありません。若手に恥じない仕事をみせていきたいですね」と笑顔で話してくれた。
DATA
歴史的建造物を守ることは
歴史や文化を学ぶこと